④イタリア語で歌うこと

≪解説≫
④イタリア語で歌うこと

まず日本語の発音の特徴を考えてみましょう。
私たち日本人は生まれた時から日本語を話しているので、どんな風に発音しているのかあまり意識したことがありません。
「あ」と「a」は同じではないかと思っていたりしますが、実は違うのです。

日本語の母音は舌の先は下の歯の裏に近いところにあり、舌の奥の方は上がっています。
スキーのゲレンデのように奥から口先に向かって下がってくる感じです。
また、「い」と「え」は口角を横に引き気味にして発音します。
このようにすると、舌根は少し硬くなり力が入ったようになります。
日本語の母音は喉の奥の空洞を狭くして発音する言語なのです。

明治初期、鎖国を解いて西洋音楽が入って来る前に歌われていた日本の音楽は、
民謡、詩吟、浪曲、声明などなど、日本語の発音のままに歌っているものです。
なんとなく潰したような声のイメージではありませんか?
その日本古来の歌が日本人の母音の位置をあらわしているのです。

ですから「a」をみて「ア」とふりがなを振ってしまうと、無意識のうちに日本語の発音になってしまい舌がのどを塞いでしまいます。
これは日本人である以上仕方がないことですね。
「のどをあける」ということをまず学ばなければならないので、イタリア人に比べ 勉強の手間が一つ多いのです。

ですから、はじめにイタリア歌曲を勉強し始めた時、どうしてもカタカナで読み方を振りたくなるかもしれませんが、
これは絶対やらないようにしましょう。
いつまでたっても日本人喉から離れられなくなってしまいます。
どうしても読めなくてふりがなを振ったとしても、読めるようになったらすぐ消すこと。
2~3曲歌い進むうちには振らないで読めるようにしましょう。

イタリア語の「あ」は漫画にあるとおり、舌が下がり、喉の奥と口蓋垂が見えます。
喉の奥の空洞は縦長の筒状になっていて、咽喉腔(いんこうくう)と言います。
耳鼻咽喉科の咽喉はここのことです。
咽喉腔を通って声が出てくるわけですから、舌で邪魔しない方が響くのは当たり前ですよね。

ただ、やってみるとムズカシイ。
舌が思い通りにどいてくれなくて勝手に動いてしまったり、口を縦に開けることが出来なかったりします。
舌が動いてしまうのはそれなりの理由があるのですが、これはまた別の回で説明します。

私は「a」は「o」のように、「o」は「a」のようにと言っていますが、イタリア語の「a」と「o」は双子の兄弟のように似通った口の開き方なのです。
「u」は小さい「o」のイメージ。
「i」と「e」は日本語のように舌根を上あごに近づけないで、どちらかというと喉に向かって滑り降りるゲレンデのように舌根に向かって下がるように発音します。
最初は「ドレミファソラシド」を唇や顎をあまり動かさずに舌の動きだけで歌ってみるとコツがつかめるかもしれません。
口は小さめのアルファベットのOのようにして歌ってみて、こもったり変な発音に聞えないように舌の場所を研究してみて下さい。

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