ホールレッスンをしました

ホールレッスンをしました

去る8月13日、東神奈川のかなっくホールでホールレッスンをしました。
かなっくホールは響きの通る良いホールですが、決してお風呂場のようにならず、癖や力みがあればそのまま出てしまう、歌いやすいといえば歌いやすい、でもある意味怖いホールでもあります。

クラシック声楽の発声法は数百年かけて生み出され確立されてきた技術ですが、それはマイクなど音響技術がなかった時代の必要性から産まれた産物でもあるわけです。
生の人間の声でどこまで聴衆に届かせられるか、そのことに昔の人たちは苦心を重ね、発声のみならず劇場作りにも工夫をこらしたと思います。

響く声は、その声がもっとも響くように設計されたホールで歌って初めて生きてくるのです。
レッスンで歌う場所は普通教師の自宅ですが、それだと響きの感覚がつかみにくいのです。
狭い部屋で歌うと、発声に無理があって力んでいても響いて聞こえてしまいますが、同じ発声で広いホールで歌うと詰まったような響きの弱い声に聞こえます。
これが「そば鳴り」です。
いつも普通の部屋で歌っていると「そば鳴り」した声に満足してしまい、歌えていると思い込んでしまいます。
そのままでいると、「響かせる」という実感がつかめないのです。

その状態で本番を迎えると、ホールで歌っている本人もホールが敵対しているように感じます。
表現しにくいのですが、声がどこかに吸い込まれてホール全体に届いていないような、ぽつんと一人で歌っているような感じにさせられるのです。
それでなんとかしようと、もっと声を出さなきゃとさらに力んで悪循環に陥ってしまうのです。
そうすると、「練習ではうまくいっていたのに、本番で失敗した。ホールで歌うのって難しい」と思ってしまうのです。
でも本当は練習でうまくいっていたのではないのです。
失敗したのでもなく、練習通りの成果が出てしまっただけなのです。

以前から、ホールでただ本番をこなすだけではなく、レッスンをしたいと思っていました。
今回、新型コロナのこともあり、思い切ってホールを貸し切りで一人1時間、計6名のレッスンをしてみたところ、全員その後の本番や試験でとても良い結果をおさめることができました。
やはり、響く、響かないの差がはっきり体感出来たと口々に感想を言ってくれて、これは希望者だけでも今後年に1~2回、ホールレッスンはしていくべきだと私も実感しました。

私もとても良い勉強になったと感じています。